UX / UI のデザインに強いWebシステムの開発と、BtoB Webマーケを支援するWeb制作を提供するN’s Creates (エヌズクリエイツ) 株式会社の西山です。
Webアプリケーション開発において、ユーザーの一つのアクションがきっかけとなり、複数の後続処理を実行する必要があるケースは頻繁に発生します。例えば、ユーザーが新規登録した際に、「ウェルカムメールの送信」「プロフィールデータの作成」「分析サービスへの通知」といったタスクをこなす必要があります。これらの処理を逐次的に実行すると、ユーザーへの応答時間が長くなり、システムの結合度も高まってしまいます。
このような課題を解決し、応答性が高く、スケーラブルで堅牢なシステムを構築するための強力な設計手法が「ファンアウトパターン」です。この記事では、ファンアウトパターンの基本概念から、その利点、具体的なユースケース、そして実装の考え方までを解説します。
ファンアウトパターンとは何か?
ファンアウトパターンとは、単一のメッセージやイベントを、複数の独立した消費者(コンシューマ)へ同時に配信し、並列処理させるためのメッセージングアーキテクチャです。名前が示す通り、一つの情報が扇(Fan)のように広がり(Out)、多数の宛先に届けられる様子をモデル化しています。
このパターンの中心には、メッセージブローカー(Pub/Subシステムやメッセージキューのトピックなど)が存在します。全体の流れは以下の通りです。
- 生産者(プロデューサー): システム内で発生したイベント(例: 新規注文)に関するメッセージを生成し、メッセージブローカーに一度だけ発行(Publish)します。
- メッセージブローカー: 受け取ったメッセージを、そのメッセージを購読(Subscribe)しているすべての消費者へ複製して配信します。
- 消費者(コンシューマー): メッセージを受け取り、それぞれが担当するビジネスロジック(例: 在庫更新、メール送信)を実行します。
この仕組みにより、生産者は誰がメッセージを受け取るかを意識する必要がなくなり、各消費者も互いの存在を意識することなく、独立して動作できます。
ファンアウトパターンの主な利点
このパターンを採用することで、システム全体に多くのメリットがもたらされます。
1. 非同期処理による応答性の向上
生産者はメッセージを発行した後、各消費者の処理完了を待つ必要がありません。すぐに自身の処理を完了させ、ユーザーに応答を返すことができます。これにより、時間のかかる可能性のあるI/O処理(メール送信やAPI連携など)が原因でユーザーを待たせることがなくなり、Webアプリケーションの体感速度が大幅に向上します。
2. 高いスケーラビリティ
各消費者は独立したコンポーネントであるため、個別にスケールさせることが可能です。例えば、注文処理の中で「画像のリサイズ」処理だけがボトルネックになっている場合、その消費者だけをスケールアウト(サーバーの数を増やすなど)して対応できます。システム全体をスケールさせる必要がないため、リソースを効率的に活用できます。
3. 疎結合による保守性と耐障害性の向上
生産者と消費者が直接通信しないため、システムは疎結合な状態に保たれます。これにより、以下のような恩恵があります。
- 保守の容易さ: 新しい処理(例: Slackへの通知機能)を追加したくなった場合、新しい消費者を作成してメッセージブローカーに接続するだけで済みます。既存の生産者や消費者のコードを修正する必要はありません。
- 耐障害性: 一つの消費者に障害が発生しても、他の消費者の処理は影響を受けずに継続されます。これにより、システム全体が停止するリスクを低減できます。
Web開発における具体的なユースケース
ファンアウトパターンは、Webアプリケーションの様々な場面で活用されています。
- Eコマースの注文処理: 顧客が注文を確定した一つのイベントをトリガーに、「在庫引き当て」「決済処理」「注文確認メールの送信」「配送システムへのデータ連携」を並列で実行する。
- ユーザーの新規登録: 登録イベントを発行し、「データベースへのユーザー作成」「ウェルカムメール送信」「CRMシステムへの顧客情報登録」「分析基盤へのイベント送信」を同時に行う。
- SNSの投稿フィード配信: あるユーザーの投稿イベントを、そのユーザーのフォロワー全員のタイムライン生成キューにメッセージを配送する。
- マイクロサービス間のイベント連携: あるマイクロサービス(例: 商品サービス)でデータが更新された際に、その更新イベントを関係する他のマイクロサービス(例: 検索サービス、推薦サービス)へ一斉に通知し、データの整合性を保つ。
実装の考え方
ファンアウトパターンは、特定の言語やフレームワークに依存するものではなく、多くのクラウドサービスやメッセージングミドルウェアを利用して実現できます。
例えば、Amazon Web Services (AWS) を利用する場合、以下のような構成が一般的です。
- メッセージブローカーとして: Amazon SNS (Simple Notification Service) のトピック機能を利用します。
- 生産者として: Webアプリケーション(EC2やECS上で動作)が、イベント発生時にAWS SDKを使ってSNSトピックにメッセージを発行します。
- 消費者として: それぞれのビジネスロジックを実装したAWS Lambda関数や、Amazon SQS (Simple Queue Service) のキューをSNSトピックにサブスクライブさせます。
この構成では、アプリケーションがSNSに一度メッセージを送るだけで、AWSが後続の各Lambda関数やSQSキューへのメッセージ配信を並列で自動的に行ってくれます。
まとめ
ファンアウトパターンは、単一のイベントから多数の処理を効率的に実行するための、非常に強力なアーキテクチャです。システムを非同期化・疎結合化することで、応答性、スケーラビリティ、そして保守性を飛躍的に向上させることができます。
特に、マイクロサービスアーキテクチャやイベント駆動型のシステムを構築する際には、中心的な役割を果たす重要なパターンです。あなたの開発するシステムにおいて、「一つのアクションが多くの影響を及ぼす」ような要件が現れた際には、ぜひこのパターンの適用を検討してみてください。
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