アイゼンハワーのマトリックスとは?

西山秀治 / 2025年12月5日

UX / UI のデザインに強いWebシステムの開発と、BtoB Webマーケを支援するWeb制作を提供するN’s Creates (エヌズクリエイツ) 株式会社の西山です。

「新機能の実装に追われて、リファクタリングの時間がない」
「テストコードを書くべきだとわかっているが、納期が迫っている」

エンジニアなら誰しも、このジレンマに苦しんだことがあるはずです。

名著『Clean Architecture』の著者ロバート・C・マーチンは、この永遠の課題について、第34代アメリカ大統領ドワイト・D・アイゼンハワーの言葉を引用して説明しています。

今回は、ソフトウェア開発における「緊急」と「重要」の決定的な違いについて解説します。

アイゼンハワーのマトリックスとは

アイゼンハワー大統領は、タスクを以下の2つの軸で分類しました。

  1. 重要か、重要でないか(Importance)
  2. 緊急か、緊急でないか(Urgency)

そして、彼はこう言いました。

「私には2種類の問題がある。緊急な問題と重要な問題だ。緊急な問題は重要ではなく、重要な問題は決して緊急ではない」

これを4つの象限(マトリックス)に当てはめると、以下のようになります。

緊急である
(Urgent)
緊急ではない
(Not Urgent)
重要である
(Important)
第1象限

  • 危機的状況
  • 期限のある課題
  • サーバーダウン対応
第2象限(最重要)

  • 計画・準備
  • リファクタリング
  • アーキテクチャ設計
重要ではない
(Not Important)
第3象限(錯覚)

  • 些細な機能追加
  • 無意味な会議
  • 多くのメール対応
第4象限

  • 時間の浪費
  • 待ち時間

ソフトウェアにおける「振る舞い」と「アーキテクチャ」

クリーンアーキテクチャでは、ソフトウェアの価値を以下の2つに大別しています。

  • 振る舞い(Behavior):機能、バグ修正、仕様通りに動くこと。
  • アーキテクチャ(Architecture):構造、変更のしやすさ、保守性。

ここからが本題です。この2つをアイゼンハワーのマトリックスに当てはめるとどうなるでしょうか?

1. 「振る舞い(機能)」は常に緊急である

ビジネスサイド(PM、営業、顧客)にとって、機能追加やバグ修正は常に「緊急」です。「来週までにこの機能が欲しい」「今すぐこのバグを直してくれ」。これらは常に締め切りとセットでやってきます。

2. 「アーキテクチャ(構造)」は緊急ではないが、重要である

一方で、コードを綺麗に保つこと、テストを書くこと、モジュールを疎結合に保つことは、今すぐやらなくてもシステムは動きます。つまり、「緊急」ではありません

しかし、システムの寿命を延ばし、将来の開発速度を落とさないためには、極めて「重要」です。

エンジニアが陥る「第3象限」の罠

Uncle Bobは、多くの現場で優先順位が間違っていると指摘します。本来あるべき優先順位は以下の通りです。

  1. 緊急 かつ 重要 (システムダウン対応など)
  2. 緊急ではない重要 (リファクタリング、アーキテクチャ設計)
  3. 緊急 だが 重要ではない (些細な機能追加、過剰な会議)
  4. 緊急でも重要でもない

しかし、現実はどうでしょうか?
多くのチームが 3番目の「緊急だが重要ではない」 ことを、1番目の「重要かつ緊急」 だと錯覚して優先してしまっています。

ビジネスサイドは「機能(振る舞い)」の重要性を過大評価しがちです。なぜなら、彼らにとって「アーキテクチャ」は見えないからです。
その結果、重要度が高いはずの「アーキテクチャ(第2象限)」が無視され、重要ではない機能追加(第3象限) にリソースが割かれてしまいます。

アーキテクチャを守るために「闘争」せよ

では、どうすればよいのでしょうか?

ビジネスサイドが「緊急性」を重視するのは彼らの仕事として当然です。彼らはソフトウェアの構造が見えないのですから。

だからこそ、エンジニアの責任が生じます。

エンジニアは、重要だが緊急ではない「アーキテクチャ」の価値を理解している唯一の職種です。
「機能を作る」ことと「構造を守る」ことのバランスをとるために、ビジネスサイドと戦うこと(闘争) も、エンジニアの職務の一部なのです。

「機能開発を優先して汚いコードを書くことは、長期的には開発速度を低下させ、ビジネスを失敗させる」

これを説明し、第2象限(緊急ではないが重要なアーキテクチャ)の時間を確保することは、プロフェッショナルの義務だと言えます。

まとめ

  • 振る舞い(機能) は緊急だが、必ずしも重要ではない。
  • アーキテクチャ(構造) は緊急ではないが、常に重要である。
  • 緊急性に負けて重要性を無視すると、システムは腐敗する。
  • 「重要」を優先するために戦うのが、エンジニアの仕事である。

目の前のチケットを消化すること(緊急性)に追われ、コードベースの健康(重要性)を損なっていませんか?
一度立ち止まって、アイゼンハワーのマトリックスを思い出し、今やっている作業が本当に「重要」なのか、問い直してみましょう。

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