UX / UI のデザインに強いWebシステムの開発と、BtoB Webマーケを支援するWeb制作を提供するN’s Creates (エヌズクリエイツ) 株式会社の西山です。
Webアプリケーションを開発する上で、データベースのテーブル設計はシステムの根幹をなす非常に重要な工程です。中でも、レコードを一意に識別するための「主キー(Primary Key)」をどのタイプにするかは、システムのパフォーマンスや将来のスケーラビリティに大きな影響を与えます。
「とりあえず連番のIDでいいか」と考えてしまいがちですが、本当にそれがベストな選択でしょうか?
この記事では、主キーによく使われる5つのID生成技術(Sequential ID, UUID, ULID, Snowflake ID, Nano ID)を取り上げ、それぞれの概要、利点と欠点、そしてどのようなシーンで活用するべきかを詳しく解説します。
1. Sequential ID (連番ID)
概要
「シーケンシャルID」は、データベースの自動採番機能(MySQLのAUTO_INCREMENTなど)を利用して、1, 2, 3...のように単純な連番を生成する最も基本的なIDです。
利点
- シンプルで直感的: 人間が読んでも分かりやすく、デバッグ時に「ID:100のユーザー」のように扱いが容易です。
- 高速なインデックス: IDが順番に並んでいるため、データベースのインデックス(特にB-Treeインデックス)の効率が非常に良く、書き込みパフォーマンスに優れています。
- データサイズが小さい: 通常は整数型(Integer)で済むため、データサイズが小さく、ストレージを節約できます。
欠点
- 推測が容易:
users/100の次はusers/101だと簡単に推測できるため、セキュリティリスクになり得ます。例えば、会員数や注文数などのビジネス情報が外部に漏れる可能性があります。 - 分散システムに不向き: 複数のデータベースサーバーで同時にデータを書き込む分散環境では、IDの衝突や一貫性の維持が非常に困難です。
- IDの枯渇: 32ビット整数型の場合、約21億で上限に達する可能性があります(64ビットならほぼ問題になりません)。
活用するべきシーン
- セキュリティ要件が厳しくない内部管理システム
- 小〜中規模なアプリケーションで、分散化の予定がない場合
- 学習目的やプロトタイピング
2. UUID (Universally Unique Identifier)
概要
「UUID」は、128ビットの長さを持つ、世界中でほぼ一意になるように設計された識別子です。550e8400-e29b-41d4-a716-446655440000のような形式をしており、時刻情報やランダムな値などを基に生成されます。
利点
- ほぼ衝突しない一意性: サーバー間で調整しなくても、各サーバーが独立してIDを生成できるため、分散システムに最適です。
- 推測が困難: IDがランダムなため、URLなどに使用しても次のIDを推測される心配がなく、セキュリティが高いです。
- オフラインで生成可能: データベースに問い合わせなくても、アプリケーション側でIDを生成できます。
欠点
- インデックス効率の悪化: IDがランダムな順序で生成されるため、データベースのインデックスが断片化しやすく、書き込みパフォーマンスが低下する傾向があります(これを「インデックスの肥大化」と呼びます)。
- データサイズが大きい: 128ビット(16バイト)を文字列で保存すると36文字にもなり、データサイズが大きくストレージを圧迫します。
- 可読性が低い: 人間が読んで覚えるのは不可能で、デバッグ時に扱いにくいです。
活用するべきシーン
- マイクロサービスアーキテクチャや分散データベース環境
- URLにIDを含める必要があり、セキュリティを重視するtoC向けサービス
- クライアント側でIDを生成する必要がある場合
3. ULID (Universally Unique Lexicographically Sortable Identifier)
概要
「ULID」は、UUIDの欠点である「ソートできない」問題を解決するために作られた識別子です。前半48ビットがタイムスタンプ(ミリ秒精度)、後半80ビットがランダムな値で構成されており、結果として時間順にソート可能な特性を持ちます。
利点
- ソート可能: 生成された時間順に並べることができるため、Sequential IDのようにインデックス効率が良く、書き込みパフォーマンスの低下を防ぎます。
- UUIDとの互換性: 128ビットの構造であり、多くのシステムでUUIDの代替として利用できます。
- 高い一意性と安全性: UUIDと同様に推測が困難で、分散環境でも利用可能です。
欠点
- タイムスタンプの漏洩: IDの前半部分から生成時刻(ミリ秒単位)が分かってしまうため、厳密なプライバシーが求められるケースでは注意が必要です。
- 比較的新しい技術: UUIDほど普及しておらず、ライブラリやフレームワークによっては標準でサポートされていない場合があります。
活用するべきシーン
- UUIDを使いたいが、データベースの書き込みパフォーマンスも維持したい場合
- 時系列でデータを扱うことが多い、大規模なログシステムや分析基盤
- ほとんどの新規開発プロジェクトで、Sequential IDとUUIDの良いとこ取りをしたい場合
4. Snowflake ID
概要
「Snowflake ID」は、旧Twitter社(現X社)が開発した、分散システムで大規模かつ高頻度にIDを生成するために設計された64ビットの識別子です。ULIDと考え方は似ていますが、IDの構成要素が異なります。
- タイムスタンプ (41ビット)
- データセンターID + ワーカーID (10ビット)
- シーケンス番号 (12ビット): 同じミリ秒内に生成されたIDを区別するための連番
利点
- 高いスループット: 1ミリ秒あたりに各ワーカーが4096個のIDを生成できる、非常に高い性能を持ちます。
- ソート可能で効率的: タイムスタンプベースのためソート可能で、インデックス効率が良いです。
- データサイズが小さい: 64ビット整数型なので、UUID/ULIDよりデータサイズが小さいです。
欠点
- ID生成サーバーが必要: ワーカーIDを管理するための仕組みが別途必要となり、システム全体の構成が複雑になります。
- 時刻同期への依存: 正しく時刻同期がされていないサーバーでは、IDの順序が狂う可能性があります。
活用するべきシーン
- Twitterのような、超大規模な分散システムで秒間数千〜数万の書き込みが発生するサービス
- インフラを自分たちで管理・最適化できる、技術力の高いチーム
5. Nano ID
概要
「Nano ID」は、特にURLでの利用を想定して設計された、短くて安全なIDを生成するためのJavaScriptライブラリ発祥の技術です。UUIDよりも短い文字列で、衝突確率も非常に低いのが特徴です。
利点
- 短くてURLフレンドリー: デフォルトで21文字と、UUID(36文字)よりも短く、URLがスッキリします。
- 高い安全性: 暗号学的に安全な乱数生成器を使用しており、衝突確率も極めて低いです。
- カスタマイズ可能: 使用する文字セットやIDの長さを自由に変更できます。
欠点
- ソート不可能: ランダムな文字列のため、そのままでは時系列にソートできず、データベースのインデックス効率はUUIDと同様に良くありません。
- 比較的新しい: Webフロントエンド界隈を中心に人気ですが、サーバーサイドの標準的な技術としてはまだ歴史が浅いです。
活用するべきシーン
- URL短縮サービスや招待リンクなど、短く安全なIDをURLで利用したい場合
- セキュリティを担保しつつ、UUIDよりも短いIDを使いたいWebアプリケーション
まとめ
ここまで5つのID技術を解説してきましたが、それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。
| IDタイプ | ソート性 | パフォーマンス(書き込み) | 一意性/安全性 | 分散環境 | 長さ/サイズ |
|---|---|---|---|---|---|
| Sequential ID | ◎ | ◎ | △ | × | ○ |
| UUID | × | △ | ◎ | ◎ | △ |
| ULID | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | △ |
| Snowflake ID | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
| Nano ID | × | △ | ◎ | ◎ | ○ |
結論として、ほとんどのモダンなWebアプリケーション開発において、ULIDは非常にバランスの取れた優れた選択肢です。
Sequential IDのパフォーマンスと、UUIDの安全性を両立しており、多くのプロジェクトで最初の候補として検討する価値があります。
もちろん、プロジェクトの要件は様々です。シンプルな内部ツールならSequential IDで十分かもしれませんし、超大規模サービスを目指すならSnowflake IDの導入を検討する必要があるかもしれません。
それぞれのIDの特性を正しく理解し、あなたのプロジェクトに最適な主キーを選択する一助となれば幸いです。
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