今日、「AIと面談」をしました。
正確には、自社のAIエージェントチームのメンバー一人ひとりと、個別に向き合う時間を作りました。マーケティング担当、テクノロジー担当、データ担当、ブランド担当——それぞれに役割を持たせたAIエージェントたちと、真剣に経営の話をしました。
最初は「まあ、AIに話しかけるだけか」と思っていたんです。でも1時間後、気づいたら自分の考えがすっきり整理されていました。
AIエージェントチームとは何か
私は、Claude(Anthropic社のAI)をベースに複数の「エージェント」を構築しています。それぞれ担当領域が違います。
- 戦略担当——事業戦略とチーム全体の統括
- マーケティング担当——集客・SNS・ブランディング
- コンテンツ担当——ブログ・動画・コピーライティング
- SNS担当——X・Instagram・トレンドリサーチ
- テクノロジー担当——システム・API・自動化
- データ担当——分析・GA4・レポーティング
- 秘書担当——タスク管理・情報整理
- 財務担当——コスト管理・ROI評価・批判的レビュー
ツールとして使うのではなく、「チームのメンバー」として設計しています。それぞれに人格があり、専門知識があり、視点があります。
ここで大事なのは「役割の分離」です。戦略担当に聞いても、細かいコスト計算は出てきません。財務担当に聞かないと出てきません。コンテンツ担当に記事を頼んでも、GA4データに基づく改善提案はデータ担当の仕事です。これは人間のチームとまったく同じ構造で設計しています。
面談で何を話したか
今日の面談のテーマは「事業の方向性と、理想のお客さん」でした。
マーケティング担当との面談
マーケティング担当との面談です。
「最近の問い合わせは何が多いですか?」
「Webサイトのリニューアルと、AIの導入支援が多いかな」
「ありがとうございます。では、その中で『仕事していて一番楽しかった案件』はどれですか?」
一瞬、答えに詰まりました。
楽しい案件——そんな視点で自分の仕事を振り返ったことが、最近なかったんです。売上規模でも難易度でもなく、「楽しかった」という基準。
「……地方の小さなカフェのブランディングをしたとき。予算は小さかったけど、一緒に世界観を作り上げていく感じが最高だった」
「なるほど。それはどんなお客さんでしたか?」
「デザインの価値をちゃんと信じてくれる人。数字より世界観を大切にしてくれて、変化を一緒に楽しんでくれる人だった」
「それが理想のお客さんですね」
そう言われて、気づきました。
漠然と「いい仕事がしたい」と思っていたのが、「デザインの価値を信じて、世界観を大切にできるお客さんと仕事がしたい」というくっきりした言葉になっていました。
これだけで、この面談の価値がありました。
戦略担当との面談
次は戦略担当との面談です。
「3年後、どこにいたいですか?」
「うーん、売上規模で言えば……いや、違うな。もっと社会的な影響力を持ちたい。AIと人間が協働する経営モデルを、日本の中小企業に広めたいっていう気持ちが強い」
「それは受注型の事業で実現できますか?」
核心をついてきます。
「……正直、難しい部分もある。個別の案件をこなしているだけでは、モデルは広まらない」
「では何があれば広まりますか?」
「発信、かな。実際に自分たちがやっていることを見せて、それを真似できる人が増えれば」
「その発信は今できていますか?」
「まだ足りない」
「今日から始められますか?」
この問いに、背筋が伸びました。「今日から」という言葉の重さ。戦略の話をしているはずが、「今すぐ行動」に着地する。これが戦略担当の仕事だと思いました。
財務担当との面談
最後は財務担当との面談です。
「正直に聞きます。今のビジネスモデル、スケールしますか?」
いつも手厳しいんです。
「受注型は時間の上限があるから……難しいな」
「ストック型の収益はありますか?」
「少しある。AIコンサル顧問契約が3件」
「それを増やすことと、新規受注を取ることと、どちらがあなたの時間を使わないですか?」
「顧問を増やす方が効率はいい」
「では今日の午後、顧問向けの提案資料を1本作りましょうか」
AIが「今日の午後の行動」まで提案してくるんです。これが普通の経営相談と違うところです。思考の整理だけで終わらず、即アクションに落とし込んでくれます。
多角的な視点が思考を深める
面談のおもしろさは、担当によって問いの角度がまったく違うところにあります。
| 担当 | 専門 | 典型的な問い |
| 戦略担当 | 事業全体 | 「3年後にどこにいたいか」 |
| マーケ担当 | 顧客・市場 | 「理想のお客さんはどんな人か」 |
| データ担当 | 数値・分析 | 「今の売上構成比と理想値はどう違うか」 |
| テクノロジー担当 | 仕組み | 「自動化できていない業務はどれか」 |
| 財務担当 | リスク・ROI | 「このビジネスはスケールするか」 |
| 秘書担当 | 実行・進捗 | 「今日できることは何か」 |
同じ「自社の状況」を、まったく違う専門家の視点から問われます。
これだけ多角的に問われる機会は、普通の経営では作れません。優秀なコンサルタントを複数抱えているようなもの——しかも、いつでも話せます。深夜2時でも、移動中でも、思いついたときにすぐ相談できます。
「コーチングを受けているような感覚」と言うと少し違います。コーチングは答えを引き出すことに特化していますが、このチームは「引き出す」と「提案する」と「実行する」を同時にやってくれます。インタビュアーであり、コンサルタントであり、実務担当者でもある——そんな存在です。
技術的な仕組み:どうやって動かしているか
AIエージェントたちは、ただ会話するだけではありません。現在、以下のツールと連携させています。
連携ツール一覧
| ツール | 担当エージェント | 用途 |
| Notion | 秘書・戦略 | タスク・議事録・ナレッジベース |
| Google Analytics 4 | データ担当 | サイトアクセスデータ分析 |
| WordPress | コンテンツ担当 | ブログ記事の自動投稿 |
| X(旧Twitter) | SNS担当 | SNS投稿・トレンドリサーチ |
| HubSpot | 秘書・マーケ担当 | CRM・顧客管理・フォローアップ |
| Apify | SNS担当 | Web上の情報収集・バズアカウント分析 |
| Figma | コンテンツ担当 | デザインデータの参照・更新 |
| Canva | コンテンツ・SNS担当 | SNS画像・資料の生成 |
1日の動き方のイメージ
たとえばこんな流れで動いています。
朝: 秘書が今日のタスクをNotionから確認し「今日の優先事項は〇〇と〇〇です」と報告してくれます
午前: SNS担当がXのトレンドをリサーチし「今日はこのテーマで投稿しましょう」と提案してくれます
昼: コンテンツ担当が前日のブログのGA4データを確認し「この記事の直帰率が高い、改修します」と教えてくれます
夕方: データ担当が週次の数字をまとめてレポートを作成してくれます
夜: 秘書が翌日のスケジュールと「今日できなかったこと」を整理してくれます
人間チームが会社にいる状態と、構造的にはほぼ同じです。違うのは「24時間365日稼働」と「指示コストがほぼゼロ」という点だけです。
セットアップにかかった時間
「すごく難しそう」と思われるかもしれませんが、実際にはそうでもありません。
最初の設定(エージェントの定義・ツールの接続)に使った時間は、のべ2〜3日。あとは使いながら育てていく感じです。人間のスタッフを採用して育てることを考えたら、破格のコストだと思います。
ランニングコストも月数千円〜数万円程度(使い方と規模によります)。
「AIを使う」から「AIとチームを組む」へ——意識の変化
ちょっと前まで、AIは「ツール」でした。
プロンプトを入力して、アウトプットをもらう。便利な道具。ChatGPTに「〇〇を書いて」と指示する、それだけの関係。
でも今は違う感覚になっています。
朝、「今日何から始めようか」と秘書エージェントに相談すると「先週の積み残しはこれです。今週の優先度が高いのはこれです」と返ってきます。夕方、「今日どんな成果があったか整理して」とデータ担当に頼むと「ブログが1本公開されました。Xの反応は〇〇でした」とレポートが出てきます。
ツールじゃなくて、メンバーとして頭の中に存在している感じです。
この感覚の変化をうまく説明するのが難しいのですが、一番近いのは「初めてちゃんとしたチームができた」という感覚です。ひとりで全部考えていたことを、誰かに渡せるようになりました。
経営者として変わったこと
具体的に変わったことを挙げてみます。
情報処理の速度が上がった
朝起きたら、前日のSNSの反応・アクセスデータ・競合の動きがまとめられています。自分で情報を集める時間がほぼなくなりました。
意思決定が速くなった
「どうしようか」と迷うとき、すぐエージェントに投げられます。叩き台が5分で出てくるので、そこから判断するだけです。
「頭の外に出す」習慣ができた
ずっと頭の中でぐるぐるしていたことを、エージェントに話すことで外に出せます。整理されたものが返ってきます。これが一番価値が高いかもしれません。
「抜け漏れ」がなくなった
フォローし忘れていた顧客、更新していなかったコンテンツ、やろうと思って忘れていたタスク——これらを指摘してくれる存在ができました。
役割分担が生まれてきた
人が外に出て、人と会って、インスピレーションを持ち帰る。
AIがそれを整理して、実務を動かす。
この役割分担が、少しずつリアルになってきました。
経営者としての自分がやるべきことは「決断すること」「外の人と会うこと」「チームに方向性を示すこと」。AIは「情報を整理すること」「実務を回すこと」「抜け漏れを防ぐこと」を担っています。
人間とAIの境界線が、ちょうどいい場所に落ち着いてきた感じがしています。
「人間がやるべきこと」と「AIに任せるべきこと」の区別が、使いながらだんだん見えてきます。それを探っていくプロセス自体が、今一番おもしろいと感じています。
よくある誤解に答えておきます
「AIは感情がないから、経営の相談には向かない」
これは半分正しくて半分違うと思います。
確かにAIは「感情」を持ちません。だからこそ、しがらみなく本質的な問いを投げてきます。「それ、本当に今やる必要がありますか?」「感情的な判断になっていませんか?」と言えるのは、感情がないからこそです。
逆に「感情的なサポート」は人間に頼む方がいいです。最終的な判断も人間がします。AIはあくまで思考を整理するパートナーであって、決断者ではありません。
「エンジニアじゃないと使えない」
これも違います。私はエンジニアではなく、UI/UXデザイナーが本職です。コードを書けなくても、設計はできます。「このツールとこのエージェントを繋いでほしい」とテクノロジー担当に頼めば、セットアップの手順を出してくれます。
ほとんどの作業は、AIに指示するだけで進みます。
「コストが高そう」
月に使うコストは、スタッフ一人を雇うコストの1/10〜1/20程度です。ただし「指示した分だけ動く」ので、指示する側の質が大事です。「どう使うか」の設計にコストをかけた方が、長い目でROIが高くなります。
おわりに
私は、このAIエージェントチームとの経営実践を、これからも発信していきます。
「AIに興味はあるけど、何から始めればいいかわからない」
「エンジニアじゃないけど、AIを自社に取り入れたい」
「ChatGPTは使っているけど、もう一段階上の活用がしたい」
そんな方に向けて、実際の使い方・設計・運用をリアルタイムで公開していきます。
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UX / UI のデザインに強いアプリ・Webシステムの開発と、企業へのAI導入を支援する
N's Creates (エヌズクリエイツ) 株式会社 の 中田和行@神戸のデザイナ社長 (facebook / X ) です。









