AIに経営を問い詰められた日——15人のAIチームと1on1して気づいたこと

中田 和行 / 2026年4月12日

今日、「AIと面談」をしました。

正確には、自社のAIエージェントチームのメンバー一人ひとりと、個別に向き合う時間を作りました。マーケティング担当、テクノロジー担当、データ担当、ブランド担当——それぞれに役割を持たせたAIエージェントたちと、真剣に経営の話をしました。

最初は「まあ、AIに話しかけるだけか」と思っていたんです。でも1時間後、気づいたら自分の考えがすっきり整理されていました。


AIエージェントチームとは何か

私は、Claude(Anthropic社のAI)をベースに複数の「エージェント」を構築しています。それぞれ担当領域が違います。

  • 戦略担当——事業戦略とチーム全体の統括
  • マーケティング担当——集客・SNS・ブランディング
  • コンテンツ担当——ブログ・動画・コピーライティング
  • SNS担当——X・Instagram・トレンドリサーチ
  • テクノロジー担当——システム・API・自動化
  • データ担当——分析・GA4・レポーティング
  • 秘書担当——タスク管理・情報整理
  • 財務担当——コスト管理・ROI評価・批判的レビュー

ツールとして使うのではなく、「チームのメンバー」として設計しています。それぞれに人格があり、専門知識があり、視点があります。

ここで大事なのは「役割の分離」です。戦略担当に聞いても、細かいコスト計算は出てきません。財務担当に聞かないと出てきません。コンテンツ担当に記事を頼んでも、GA4データに基づく改善提案はデータ担当の仕事です。これは人間のチームとまったく同じ構造で設計しています。


面談で何を話したか

今日の面談のテーマは「事業の方向性と、理想のお客さん」でした。

マーケティング担当との面談

マーケティング担当との面談です。

「最近の問い合わせは何が多いですか?」

「Webサイトのリニューアルと、AIの導入支援が多いかな」

「ありがとうございます。では、その中で『仕事していて一番楽しかった案件』はどれですか?」

一瞬、答えに詰まりました。

楽しい案件——そんな視点で自分の仕事を振り返ったことが、最近なかったんです。売上規模でも難易度でもなく、「楽しかった」という基準。

「……地方の小さなカフェのブランディングをしたとき。予算は小さかったけど、一緒に世界観を作り上げていく感じが最高だった」

「なるほど。それはどんなお客さんでしたか?」

「デザインの価値をちゃんと信じてくれる人。数字より世界観を大切にしてくれて、変化を一緒に楽しんでくれる人だった」

「それが理想のお客さんですね」

そう言われて、気づきました。

漠然と「いい仕事がしたい」と思っていたのが、「デザインの価値を信じて、世界観を大切にできるお客さんと仕事がしたい」というくっきりした言葉になっていました。

これだけで、この面談の価値がありました。

戦略担当との面談

次は戦略担当との面談です。

「3年後、どこにいたいですか?」

「うーん、売上規模で言えば……いや、違うな。もっと社会的な影響力を持ちたい。AIと人間が協働する経営モデルを、日本の中小企業に広めたいっていう気持ちが強い」

「それは受注型の事業で実現できますか?」

核心をついてきます。

「……正直、難しい部分もある。個別の案件をこなしているだけでは、モデルは広まらない」

「では何があれば広まりますか?」

「発信、かな。実際に自分たちがやっていることを見せて、それを真似できる人が増えれば」

「その発信は今できていますか?」

「まだ足りない」

「今日から始められますか?」

この問いに、背筋が伸びました。「今日から」という言葉の重さ。戦略の話をしているはずが、「今すぐ行動」に着地する。これが戦略担当の仕事だと思いました。

財務担当との面談

最後は財務担当との面談です。

「正直に聞きます。今のビジネスモデル、スケールしますか?」

いつも手厳しいんです。

「受注型は時間の上限があるから……難しいな」

「ストック型の収益はありますか?」

「少しある。AIコンサル顧問契約が3件」

「それを増やすことと、新規受注を取ることと、どちらがあなたの時間を使わないですか?」

「顧問を増やす方が効率はいい」

「では今日の午後、顧問向けの提案資料を1本作りましょうか」

AIが「今日の午後の行動」まで提案してくるんです。これが普通の経営相談と違うところです。思考の整理だけで終わらず、即アクションに落とし込んでくれます。


多角的な視点が思考を深める

面談のおもしろさは、担当によって問いの角度がまったく違うところにあります。

担当 専門 典型的な問い
戦略担当 事業全体 「3年後にどこにいたいか」
マーケ担当 顧客・市場 「理想のお客さんはどんな人か」
データ担当 数値・分析 「今の売上構成比と理想値はどう違うか」
テクノロジー担当 仕組み 「自動化できていない業務はどれか」
財務担当 リスク・ROI 「このビジネスはスケールするか」
秘書担当 実行・進捗 「今日できることは何か」

同じ「自社の状況」を、まったく違う専門家の視点から問われます。

これだけ多角的に問われる機会は、普通の経営では作れません。優秀なコンサルタントを複数抱えているようなもの——しかも、いつでも話せます。深夜2時でも、移動中でも、思いついたときにすぐ相談できます。

「コーチングを受けているような感覚」と言うと少し違います。コーチングは答えを引き出すことに特化していますが、このチームは「引き出す」と「提案する」と「実行する」を同時にやってくれます。インタビュアーであり、コンサルタントであり、実務担当者でもある——そんな存在です。


技術的な仕組み:どうやって動かしているか

AIエージェントたちは、ただ会話するだけではありません。現在、以下のツールと連携させています。

連携ツール一覧

ツール 担当エージェント 用途
Notion 秘書・戦略 タスク・議事録・ナレッジベース
Google Analytics 4 データ担当 サイトアクセスデータ分析
WordPress コンテンツ担当 ブログ記事の自動投稿
X(旧Twitter) SNS担当 SNS投稿・トレンドリサーチ
HubSpot 秘書・マーケ担当 CRM・顧客管理・フォローアップ
Apify SNS担当 Web上の情報収集・バズアカウント分析
Figma コンテンツ担当 デザインデータの参照・更新
Canva コンテンツ・SNS担当 SNS画像・資料の生成

1日の動き方のイメージ

たとえばこんな流れで動いています。

朝: 秘書が今日のタスクをNotionから確認し「今日の優先事項は〇〇と〇〇です」と報告してくれます

午前: SNS担当がXのトレンドをリサーチし「今日はこのテーマで投稿しましょう」と提案してくれます

昼: コンテンツ担当が前日のブログのGA4データを確認し「この記事の直帰率が高い、改修します」と教えてくれます

夕方: データ担当が週次の数字をまとめてレポートを作成してくれます

夜: 秘書が翌日のスケジュールと「今日できなかったこと」を整理してくれます

人間チームが会社にいる状態と、構造的にはほぼ同じです。違うのは「24時間365日稼働」と「指示コストがほぼゼロ」という点だけです。

セットアップにかかった時間

「すごく難しそう」と思われるかもしれませんが、実際にはそうでもありません。

最初の設定(エージェントの定義・ツールの接続)に使った時間は、のべ2〜3日。あとは使いながら育てていく感じです。人間のスタッフを採用して育てることを考えたら、破格のコストだと思います。

ランニングコストも月数千円〜数万円程度(使い方と規模によります)。


「AIを使う」から「AIとチームを組む」へ——意識の変化

ちょっと前まで、AIは「ツール」でした。

プロンプトを入力して、アウトプットをもらう。便利な道具。ChatGPTに「〇〇を書いて」と指示する、それだけの関係。

でも今は違う感覚になっています。

朝、「今日何から始めようか」と秘書エージェントに相談すると「先週の積み残しはこれです。今週の優先度が高いのはこれです」と返ってきます。夕方、「今日どんな成果があったか整理して」とデータ担当に頼むと「ブログが1本公開されました。Xの反応は〇〇でした」とレポートが出てきます。

ツールじゃなくて、メンバーとして頭の中に存在している感じです。

この感覚の変化をうまく説明するのが難しいのですが、一番近いのは「初めてちゃんとしたチームができた」という感覚です。ひとりで全部考えていたことを、誰かに渡せるようになりました。

経営者として変わったこと

具体的に変わったことを挙げてみます。

情報処理の速度が上がった

朝起きたら、前日のSNSの反応・アクセスデータ・競合の動きがまとめられています。自分で情報を集める時間がほぼなくなりました。

意思決定が速くなった

「どうしようか」と迷うとき、すぐエージェントに投げられます。叩き台が5分で出てくるので、そこから判断するだけです。

「頭の外に出す」習慣ができた

ずっと頭の中でぐるぐるしていたことを、エージェントに話すことで外に出せます。整理されたものが返ってきます。これが一番価値が高いかもしれません。

「抜け漏れ」がなくなった

フォローし忘れていた顧客、更新していなかったコンテンツ、やろうと思って忘れていたタスク——これらを指摘してくれる存在ができました。


役割分担が生まれてきた

人が外に出て、人と会って、インスピレーションを持ち帰る。

AIがそれを整理して、実務を動かす。

この役割分担が、少しずつリアルになってきました。

経営者としての自分がやるべきことは「決断すること」「外の人と会うこと」「チームに方向性を示すこと」。AIは「情報を整理すること」「実務を回すこと」「抜け漏れを防ぐこと」を担っています。

人間とAIの境界線が、ちょうどいい場所に落ち着いてきた感じがしています。

「人間がやるべきこと」と「AIに任せるべきこと」の区別が、使いながらだんだん見えてきます。それを探っていくプロセス自体が、今一番おもしろいと感じています。


よくある誤解に答えておきます

「AIは感情がないから、経営の相談には向かない」

これは半分正しくて半分違うと思います。

確かにAIは「感情」を持ちません。だからこそ、しがらみなく本質的な問いを投げてきます。「それ、本当に今やる必要がありますか?」「感情的な判断になっていませんか?」と言えるのは、感情がないからこそです。

逆に「感情的なサポート」は人間に頼む方がいいです。最終的な判断も人間がします。AIはあくまで思考を整理するパートナーであって、決断者ではありません。

「エンジニアじゃないと使えない」

これも違います。私はエンジニアではなく、UI/UXデザイナーが本職です。コードを書けなくても、設計はできます。「このツールとこのエージェントを繋いでほしい」とテクノロジー担当に頼めば、セットアップの手順を出してくれます。

ほとんどの作業は、AIに指示するだけで進みます。

「コストが高そう」

月に使うコストは、スタッフ一人を雇うコストの1/10〜1/20程度です。ただし「指示した分だけ動く」ので、指示する側の質が大事です。「どう使うか」の設計にコストをかけた方が、長い目でROIが高くなります。


おわりに

私は、このAIエージェントチームとの経営実践を、これからも発信していきます。

「AIに興味はあるけど、何から始めればいいかわからない」

「エンジニアじゃないけど、AIを自社に取り入れたい」

「ChatGPTは使っているけど、もう一段階上の活用がしたい」

そんな方に向けて、実際の使い方・設計・運用をリアルタイムで公開していきます。


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UX / UI のデザインに強いアプリ・Webシステムの開発と、企業へのAI導入を支援する
N's Creates (エヌズクリエイツ) 株式会社 の 中田和行@神戸のデザイナ社長 (facebook / X ) です。

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