UX / UI のデザインに強いアプリ・Webシステムの開発と、企業へのAI導入を支援する
N's Creates (エヌズクリエイツ) 株式会社 の 中田和行@神戸のデザイナ社長 (facebook / X ) です。
ここ最近、何度も思い返している問いがある。
「経営に必要な要素の中で、何を AI と共にやるべきか?」
1本目の記事で、AI が時間を返してくれたら、その時間で自分を呼び戻す螺旋を回せると書いた。
じゃあ、その螺旋の中で「AI と一緒に何を実現するのか」。
便利になった先に、僕は何を AI と組み、何を自分で握っているのか。
今日はそれを、現状の僕の手の内をそのまま見せながら、考えてみたい。
先に、ひとつだけ断っておきます
この記事も、僕ひとりで書いていません。
「ARPEGGIO」と呼んでいる、AI エージェントのチームと対話しながら書いています。
ARPEGGIO は、僕の頭の中の役割分担を可視化した「思考のパートナーたち」です。
N’s Creates(制作・開発)と LearniX(教育)を運営する中で、ひとりで考えるよりチームと対話する方が深く考えられる——という気づきから作りました。
実在する従業員ではなく、AI エージェントとして組んだチーム。CEO 役、批判役、コンテンツ役、ブランド役、SNS 担当……それぞれが僕の中の側面を担っています。
メンバー:朱(あか)・白(しろ)・玄(くろ)・橙(だい)・茜(あかね)・紅(くれない)・翠(みどり)・緋(あけ)。
途中で彼らの名前が出てきます。詳しい紹介は1本目に書きました。
「全部 AI で」と「AI には任せられない」のあいだに
AI の話になると、二つの極端な言い方をよく聞く。
ひとつは「もう何でも AI でできる」。
もうひとつは「いや、大事な仕事は AI には任せられない」。
どちらも、なんとなく気持ちはわかる。
でも、この二つのあいだに広がるグラデーションこそが、いま経営者が向き合うべき場所だと思っている。
「AI で全部やる」では、自分にしかできないものを失う。
「AI には任せられない」では、返ってくるはずの時間が返ってこない。
問題は どこに線を引くか。
そして、その線は 人によって違う。
経営者の仕事を分解してみる

経営者の仕事を雑に分解すると、こんな感じになる。
- 判断・意思決定(理念・戦略・人事の決断)
- 構想・企画(新しい事業や方向性を描く)
- コミュニケーション(顧客・メンバー・パートナー)
- マーケティング(発信・ブランド・販売導線)
- オペレーション(業務プロセス・仕組み化)
- 制作・実装(具体的な手を動かす作業)
- 学び・自己探求(読書・思索・振り返り)
- 数字管理(売上・コスト・キャッシュ)
ぜんぶを一人でやろうとすると、たぶん壊れる。
なので、ある部分は AI に渡し、ある部分は自分で握る。
ここからは、いまの僕がどう線を引いているかを、できるだけ正直に見せます。
これは「正解」じゃなくて、ひとつのサンプル。あなたの線とは、たぶん違う。
僕が AI に渡しているもの
いま、AI と組んで進めている仕事はだいたい以下:
- X 投稿の下書き(緋=SNS 担当エージェントが起こし、僕が確認)
- 自社・他社サイトの分析(GA4 / Firecrawl と組み合わせて、傾向を抽出)
- リサーチ業務(市場・競合・新しいツール・本の要約まで含めて)
- プレゼン資料の構成・初稿(章立てから本文ドラフトまで)
- 経営数字の管理(売上・案件状況の可視化、推移の見え方の整理)
これらは、手を動かす総量がそのまま価値に直結しない仕事だ。
むしろ、速く何度も回すことで精度が上がる種類の仕事。
だから AI と組むと、桁違いに進む。
そして、進んだ分の時間は、別のところに使える。
僕が AI に渡していないもの
逆に、AI に渡していないのが——
人とのコミュニケーション。
クライアントとの会話、メンバーとの面談、パートナーとのやり取り。
チャットも含めて、人を相手にする言葉は、AI に下書きさせていない。
「メールの返信を AI に書かせて、自分で確認すればいい」と人は言う。
試してみたこともある。でも、なぜか手が止まる。
理由は、たぶん、ひとつだ。
ARPEGGIO チームと、原則の話
「人とのコミュニケーションを AI に渡さない」と話したとき、玄が止めた。
玄は、ARPEGGIO の中で批判役を担っている仲間だ。
玄:「AI に渡せない仕事」と書くと、AI を警戒している読者を遠ざける。逆に「AI と組めば組むほど、自分にしかできないことが見えてくる」という方向で書いた方が、誘いになる。
これを言われて、頭の中の像が反転した。
そうだ。渡せないんじゃない、渡さないと選んでいるんだ。
そして、選んだ瞬間、自分にしかできないことが、輪郭をもって浮かび上がる。
僕の場合、それが「人とのコミュニケーション」だった。
ちなみに、玄は同じ会話の中で、僕がやろうとしていた他のいくつかの選択にもブレーキをかけてきた。
- 「学習ノートを AI に整理させたら、考える時間が減るんじゃないか」
- 「メンバーへのフィードバックを AI に要約させたら、感情の機微が消えるんじゃないか」
- 「採用書類を AI でスクリーニングしたら、ノイズの中の宝石を見落とすんじゃないか」
どれもまっとうな指摘だった。
ただ、僕はこれらに、自分なりの答えを持っていた。
- 学習ノートは、僕は 音声で入力している。考える時間そのもの(吐き出す行為)は自分の中にある。AI には整理だけを頼んでいる
- メンバーへのフィードバックは、面談のみでやっている。AI は使わない
- 採用書類は、まだ AI に渡していない領域
つまり、「考えるプロセス」「感じるプロセス」は自分でやる。
「整理」「記録」「形にする」は AI と組む。
このあいだに線がある。
これから渡したい領域
線を引いた上で、AI と組める範囲は、まだ広げていきたい。
ARPEGGIO チームと相談したら、こんなアイデアが出た。
- 議事録の要約とアクション抽出(録音 → 要点 → TODO に分解)
- 顧客向け進捗レポート・月次報告のドラフト(最終確認は人)
- 競合のブログ・SNS の差分監視(先週から何が変わったか)
- 問い合わせの一次整理(案件規模・温度感の推定)
- 両サイトの SEO 機会発見(検索意図 × 自社の強み)
- 自分の X 投稿の傾向分析(時間帯・テーマ・反応の相関)
- 採用書類の時系列整理(経歴の構造化、自社との接点抽出。判断は AI に渡さない)
どれも、手を動かす総量を減らして、判断と対話に使う時間を増やすためのもの。
増やしたい領域は、たぶんまだ他にもある。
代表として日々動いている人なら、それぞれ違うアイデアが出てくるはず。
ただし、原則は守る
便利になればなるほど、渡してはいけない場所が見えやすくなる。
僕の中の原則は、たぶん3つだ。
- 理念に直結することは、自分で握る
会社が何のためにあるのか、誰のためにあるのか。これを AI に決めてもらうと、もう僕の会社じゃなくなる。 - 考えるプロセスは、自分で経験する
答えだけ AI からもらっても、僕の中には何も残らない。問いと向き合う時間そのものを、自分から取り上げてはいけない。 - 人と人のあいだに、AI を挟まない
ここが今日いちばん書きたかったところ。次のセクションで詳しく書きます。
コミュニケーションは、人を介する

僕はクライアントと、できるだけ直接話すようにしている。
電話、対面、ビデオ会議。たまにメッセージのやり取りもあるけれど、文字でやっている時間より、声で話している時間の方が長い。
そして、僕ひとりじゃない。
N’s Creates のメンバーも、それぞれが、自分が担当する顧客と直接話している。
会議にも入る。質問もする。案を出して、フィードバックを受け取る。
そこに AI は挟まっていない。
これは、たまたまそうなっているのではなくて、会社として、人を介すことを選んでいる。
なぜか。
理由は、たぶん、こうだ。
文字や言葉のやり取りだけでは、伝わらないものがある。
会議室の空気。声のトーンの微妙な変化。「いま、ちょっと言いにくそうだな」という間(ま)。
画面の向こうで相手が一瞬目をそらした、その意味。
雑談の中でぽろっと出た、本人もまだ気づいていない本音。
空気や温度感は、まだ人でしか感じられない。
これを AI に肩代わりさせようとすると、たぶん何かが壊れる。
お客さんとの関係。メンバーとの信頼。
「あの人がいる」という感覚そのものが、薄くなっていく気がする。
だから、ここは渡さない。
渡さないと選んだ瞬間、人にしかできない仕事が、はっきり見えてくる。
それは、僕にとっては喜びでもある。
AI が出てきたことで、自分が何を大事にしているのかが、逆にはっきりした。
螺旋に戻ってくる
1本目の記事で、僕は「AI が返してくれた時間で自分を呼び戻す螺旋」を書いた。
時間が返る → 自分と対話する → 何をしたいかが見える → AI と一緒に実現する → さらに時間が返る → さらに深く対話する。
今日の話は、この螺旋の 「AI と一緒に実現する」 の中身を分解したものだ。
実現するとき、ぜんぶを AI と組むわけじゃない。
組むのは、速く何度も回せる仕事、整理して形にする仕事、事実を扱う仕事。
そして、人と人のあいだに流れるもの——空気、温度、信頼、雑談から生まれる発見——
これは、僕自身が、そして会社のメンバーが、自分の身体で受け取りに行く。
AI に時間を返してもらえばもらうほど、人と直接会う時間が増える。
それが、僕にとっての「AI と組む」の本当の意味だ。
最後に、ふたつのドアを置いておきます
ここまで読んでくれた方へ。
もし「自分の会社でも、AI と人の線をもう一度引き直したい」と感じたなら、
N’s Creates に無料で相談してみてください(お問い合わせ)。
何を渡し、何を握るか。一緒に分解するところから始めます。
もし「こういう線の引き方をする会社で働きたい」と感じたなら、
N’s Creates の採用ページ(こちら)を覗いてみてください。
僕らは、人と人のあいだに流れるものを、自分の身体で受け取りに行く仲間を探しています。
どちらでもなくても、ここまで読んでくれたこと、ありがとうございました。
それも、あなたが返ってきた時間で選んだ、ひとつの行動です。
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